デジタル教科書の「ハイブリッド型」とは?
- スーパーワン長谷川

- 10月9日
- 読了時間: 5分
2030年に、新しい学習指導要領に基づく教科書が発行され、同時にデジタル教科書も新たな位置付けになった上でリリースされます。
まず、デジタル教科書も紙の教科書と同じ「教科書」として位置付けられることが決まりました。これにより、紙の教科書と同様に小中学校では無償で配布されます。
また、正式に教科書となったので、紙と同じく、「検定」の対象となります。
さらに、これまでは、「紙かデジタルか」といった選択的な位置づけと考えられていたものが、「紙とデジタルを併用する」として、紙の教科書も残り、さらに、「紙とデジタルのハイブリッド」というものも登場してきました。
デジタル教科書推進ワーキンググループでの議論
この、「紙とデジタルのハイブリッド」というもの、これは、デジタル教科書推進ワーキンググループ(中央教育審議会の初等中等教育分科会に属するワーキンググループ)での議論で登場した考えですが、私もオンラインでずっと傍聴してきていましたが、どこからどのように、この「ハイブリッド」が出てきたのかが明確でなかったので、まとめてみました。
出発点(選択肢としての“紙×デジタル併用”の明示)まず、デジタル教科書の在り方を検討する段階で、紙とデジタルの関係について複数の組合せ(全部デジタル/一部併用/学年や教科で使い分け/設置者が紙かデジタルかを選択/デジタル主・紙は必要部分のみ 等)が列挙され、のちの「併用」や「ハイブリッド」考え方の土台が示されました(検討会議第一次報告〈令和3年6月〉を引用) 。→文部科学省
「当面の間は併用」の政策方針(2023)中教審のワーキング(教科書・教材・ソフトウェアの在り方WG)が令和5年2月の「審議経過報告」で、当面の間は紙とデジタルを併用し、段階的導入(英語→算数・数学へ拡大)とする基本線を示しました。→文部科学省
“ハイブリッドに活用”の表現が省内資料で定着(2024)文科省の整理資料(2024年11月)は、紙とデジタルの在り方を「児童生徒の特性・学習内容に応じてハイブリッドに活用」「当面の間は併用」と明記。段階的導入(小5~中3の英語、次いで算数・数学)も併記されました。→文部科学省
次期学習指導要領の諮問(2024年12月)2024年12月25日・中教審総会(第140回)で、次期学習指導要領に関する大きな諮問が行われ、教科書の在り方(デジタル教科書含む)を制度面から見直す議論の受け皿が整います。→文部科学省
デジタル教科書推進WGの本格審議(2024–25)デジタル教科書推進WGでは、2025年2月14日に公表した「中間まとめ(案)/概要」で、次の3点を明確化:① デジタル教科書の現行制度(教科書“代替”教材/検定・採択・無償給与の対象外/当面は併用)を整理、② 「紙かデジタルか」の二項対立ではなく両者の良さを取り入れることを強調、③ 「一部が紙・一部がデジタルで作られた“ハイブリッドな形態の教科書”も認める」と明記(=“ハイブリッド型”を制度設計の選択肢として公式文書に位置づけ)。→文部科学省、併せて、新しい制度(=デジタルも検定・採択・無償給与等の対象に)への道筋や、**導入は「遅くとも次期学習指導要領の実施に合わせて」等の実務スケジュール感も示されています。→文部科学省
採用フェーズ(審議取りまとめ・方針化:2025年9月)2025年9月24日、デジタル教科書推進WGが「審議まとめ」を取りまとめ。大臣会見でも、「新しい形態の教科書の導入」を明言し、紙・デジタルそれぞれの良さを踏まえ授業を設計する方向、導入時期は次期学習指導要領の実施に合わせることを念頭とする旨を表明しました。ここで“ハイブリッド型”を含む新たな形態の導入方針が政治的にも確認された格好です。
このように、コロナ禍で急きょ、デジタル教科書が小中学校に配布された直後の令和3年(2021年)から、議論してきたものになるのですが、議事録を読み返しても、学校での何か具体的な課題などがあったというわけではなく、つまり、以下のようにまとめることができます。
コロナ禍でデジタル教科書が急浮上してきたが、急であるが故にすぐに利用できる学校とそうでない学校が出てきそう。
なので、準備が間に合わない学校はこれまで通り紙で構わないとする(「併用」という考えの始まり)
法整備が追いついていないので、デジタル教科書は「教科書“代替”教材」とし正式には教科書ではないもとして位置付ける→「教科書“代替”教材」とは、各教科書会社が商品として販売してきたデジタル教科書であり、当然、教科書会社によってUIも仕様もバラバラに。バラバラの仕様のものを大急ぎで現場への導入を図ったために、ユーザビリティの問題や、現場や学校現場への負担増大という問題が生じ、デジタル教科書「アンチ」を拡大させることに。
特に学校現場の「アンチ」に対策として、「紙・デジタルそれぞれの良さを踏まえ授業を設計する」という方針が決定。しかし、自治体で紙ばかりが採択されるのも困るので、紙もデジタルも含む、「ハイブリッド」という「選びやすさ」を重視したモノが登場。
これはあくまで、私が私なりにまとめたものであるので、なにがしかを評論したり、批判したりするものではありませんが、そうそう外れてはいないまとめだと自負しています。
そういうわけで、誕生した「ハイブリッド」。紙とデジタルのいいとこ取りをした教科書。
具体的にどういったものなのか、かなり想像しにくいという方は多いのではないでしょうか。
スーパーワンが考える「ハイブリッド」の姿

私も「ハイブリッド」の具体的な姿形がわからないので、あくまで、スーパーワンなりに、その内容を考えてみました。
紙の教科書は、生徒が書き込める「学習プラン作成ガイド」。
紙の教科書は、学習の題材となる「ストーリー」が記載されたもの。
デジタル教科書は、学習プランやストーリーとリンクする「情報への入り口」。
デジタル教科書は、学習プランやストーリーとリンクする「アクションへの入り口」。
どうでしょう?
といっても、これだけでは具体的でないので、またいくつかの記事に分けて書くことにします。



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